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根管治療とは6

2017年3月31日

ところで、根管はなぜすき間があるといけないのでしょうか。それをできるだけわかりやすく説明しましょう。
人間の体というのは外界と接してもよいところと接してはいけない、あるいは余計なすき間があってはいけないところがあります。外界すなわち空気と接してよいところは皮膚の表面や結膜です。手で言えば、手の甲、手のひら、そして爪の部分などです。
ただし、爪の内側は接してはいけない部分です、顔で言うと、鼻の頭、眼球の前、ただし、眼球は涙で潤っていなければなりません。口の中は外界と接してもかまいません。ただし、濡れていなければなりません。口から始まって肛門まで、消化管粘膜は外界と接しているところと言えます。ただし、いろいろな部位で、たとえば胃の中では胃液、腸の中ではそれぞれにふさわしい体から出た分泌物で湿っています。
それから、呼吸器においても鼻の穴から肺胞まで、外界と接しています。ただし、それぞれは湿っています。これらが外界と交通してよい部位です。さらに各部位は環境に適した組織になっていますが、これ以外は外界と接してはいけないわけです。
健康な人間の体には余計なすき間はありません。もし外界と交通したり余計なすき間があると、その部分にさまざまな好ましくない反応が現れます。自然気胸という病気はこの原則に反した時の病気です。
歯についても同じことが言えます。神経を取ったあとの管、これは空洞になります。すなわち余計なすき間です。この比較的大きなすき間は残念ながらほとんど自然にふさがらないのです。すき間があると、どのような反応が現れるというと、根の先端が少しずつ溶けてきます。これは治療が難しくなります。
人間の体が持っている「異物排除」(余計なものは体から出してしまおうという働き)としての現れなのです。それから、もう一つは「うみのふくろ」ができる場合。これは有害なすき間があることによって起こる化膿炎症が急激に広がっていくのを阻止するための反応です。根が溶けてくる場合も、うみのふくろができる場合も「生体防御」の反応なのです。

根管治療とは5

2017年3月29日

根管治療に成功する秘訣は、管を密閉することです(特に根の先端を)。薬をしみ込ませた綿を入れておくだけでは、外界との遮断ができません。これで悪い経過をたどることがわかります。
それから、薬物を充填する方法、これも薬物は根の先から溶け出していく場合もありますし、十分な密閉が永続的に期待できるかというと、そうはいきません。この場合も、往々にして好ましくない経過をたどることになります。
次にガターチャ・ポイントという、既成のある一定の太さを有した棒状の天然ゴムを入れる方法があります。これも根の先までしっかり入っていなければ、綿を詰めたり、あるいはのり状の薬を詰めたりするのと同じ結果を招きます。根の先端でいかに密閉できるかということが、成功の重要なポイントなのですから、そこが緊密にパッキングされていない時は、全く同じような経過をたどります。
ところで、歯科治療が最も進んでいるといわれる米国でも、歯の無い人が意外に多いことは専門家の間ではよく知られています。
たしかに、日本のほうが歯の残存率は高いのです。しかし、それは日本の根管治療が優秀であることとは、全く次元の異なることがらです。
日本では、根の先が化膿していたり、不快症状を伴ったまま、口の中に放置されています。もし日本のような根管治療を米国で行ったら、大多数の歯科医は、その資格を剥奪されることでしょう。医療訴訟の多い国、米国の特殊な事情が、やむなく抜歯を選択させているのです。

根管治療とは4

2017年3月27日

なぜ正しい根管治療が必要なのでしょうか。正しい根管治療をやむをえずできなかった場合でも、時には無症状に経過する場合があります。
それはたまたまそういう結果になったわけで、すべての場合が無症状に経過してくれるとは限りません。多くの場合は問題が出てきます。
とりわけ若年時(中高生、高校生、とりわけ小学生時代)に不十分な根管治療が行われた歯は根の先で病巣ができたり、根の先が溶けてきたりというような、なかなか治しにくい症状の悪化が、桁はずれに高頻度に現れます。
抜歯を宣告される歯とはどのような状態でしょうか。多くの場合は根の先に病変があり、たびたび化膿を繰り返したような歯だったのではないでしょうか。
あるいは、根の先が溶けていたのかもしれません。根の先が極端に溶けてきた場合以外は、多くの場合、抜歯の必要はありません。囊胞(うみのふくろ)が大きくても保存可能な場合が大変多いのです。
それでは悪い経過をたどってしまう歯はいったいどういう処置をされているのでしょうか。多くの場合、神経を取ったあとの管が十分に密閉されておりません。薬をしみ込ませた綿が入っていたり、あるいは十分神経が取られてなく、神経が生き残ったまま腐敗していたり、あるいはのり状の薬がただなんとなく、詰められていたりするケースです。

根管治療とは3

2017年3月24日

神経を抜く行為を「抜髄」と言いますが、この手順を経たあと、神経が入っていた管に根管充填という治療を行うわけです。この処置が十分であれば根の先ではほとんど異常が起きません。適切な処置が行われず放置された場合、あるいは根管治療をしてもそれが十分でなかった場合に、炎症の広がりは根の先、すなわち骨の中へ進み、化膿炎症を起こしてくるわけです。こういうことのないよう根管治療が行われているはずです。
根管治療後、歯にはそれなりの欠損(歯の固い部分が失われること)が生じます。それを部分的に詰める(充填)あるいはそれでも補いきれない場合は、さらにその歯のほとんどを金属でかぶせる治療(歯冠修復)を行って、本来の「咬合」に耐えられるよう歯の形を回復していきます。根管治療というのは歯冠修復、すなわちかぶせ治療の前に必要となる歯の基礎工事的な治療行為と言えると思います。

根管治療とは2

2017年3月22日

現在、この「根管治療」という言葉は学術的には(特に諸外国では)、あまり用いられておりません。日本でも「歯内療法」という言葉のほうが一般的と言えます。「歯内療法」となりますと、その言葉の意味範囲が広がります。そのため、今回は狭い意味での「歯内療法」、すなわち「根管治療」についていろいろ話を進めていきます。
「根管治療」には「根管形成」と「根管充填」という過程が含まれます。「根管形成」は神経の形づくり、「根管充填」は管の充填(封鎖)行為を言います。
「根管治療」に成功する最大のポイントは、「いかに緻密に根の先端部を封鎖できるか」にあるのです。
それでは根管治療というのは通常の治療の中で、どういう位置にあるかということを説明しましょう。ふつう、虫歯にはその進行程度によってC1からC4という段階があります。
C2までは虫歯の進行が象牙質にとどまっています。したがって、通常は神経、すなわち歯髄までは侵されていないわけです。
もし歯髄まで虫歯が進行していきますと、当然これらは炎症を起こしますので、相当な痛みが現れます。炎症の広がりや強さによっては、この歯髄の特別な処置を必要とする事態になってきます。

根管治療とは1

2017年3月20日

人間の歯が失われるのを、大きく分類しますと、重度の虫歯(軽度の虫歯でも抜歯する歯医者もいますが)と歯槽膿漏によります。このことは、多くの方がご存知です。
ところで、ここで取り上げている「根管治療」というのは、重度の虫歯(根の先が化膿してうみの袋がある)のほぼ決定的解決策としての療法であると、まずご理解ください。
「根管治療」で歯槽膿漏を治すことができないのは言うまでもありませんが、ただし、「根管治療」も必要になることはあります。
でも、歯槽膿漏の治療法では決して重度の虫歯を治すことはできません。従って、2つの病気を併せ持っている場合は、どちらの治療法も適切に行わなければ治療は望めません。
「根管治療」とは神経(正式には歯髄と言います)が入っていた管を清掃、拡大して一定の約束に従った形に整えたあと、根の先端まで、できるだけ緻密に封鎖していく治療を総称して言うわけです。もちろん、神経を取る行為から、管の中に時おり薬を塗る行為も含まれます。

よい歯磨き剤とは

2017年3月17日

歯磨き剤にはどんな成分が含まれているでしょうか。一般に、歯磨き剤には、次のような基本成分が配合されています。
研磨剤…リン酸カルシウム、水酸化アルミニウムなど
発泡剤…ラウリル酸ナトリウムなど
湿潤剤…グリセリンなど
粘結剤…アイリッシュモスなど
香味剤…ハッカ、スパイスなど
そのほかにも薬用成分として、虫歯に対する抵抗性を高めるフッ素剤、プラーク堆積を抑制する酵素剤、炎症を軽減させる抗炎症剤などが含まれる歯磨き剤もあります。
歯磨き剤に含まれる基本成分の効果のうち、主なものは次のとおりです。
研磨剤…歯の表面に付着したプラークや色素(タバコのヤニ、茶しぶ)を除去します。
発泡剤…歯磨き剤を口のなかに拡散させ、洗浄効果を高めます。
香味剤…ハッカ(ペパーミント、スペアミント)などの香料には、爽快感や清涼感があり、口臭の予防効果があります。
また、虫歯や歯周病の予防剤としての効果、歯の知覚過敏の抑制効果をうたった歯磨き剤もあります。ここで注意したいのは、歯磨き剤に頼ってブラッシングがおろそかにならないようにすることです。また、歯根の露出した歯には研磨剤の入っていない液体歯磨き剤が適しています。

ブラッシングの知識2

2017年3月15日

ていねいにやさしく磨く
歯科で二大疾患といえば虫歯と歯周病です。そしてこの原因はプラークです。ブラッシングの目的は、第一にプラークを除去することにあります。第二に歯肉をマッサージして血行をよくし、栄養と酸素を送り込んで歯肉の炎症をやわらげることです。
とくに歯と歯肉の境目や歯と歯のあいだはプラークが付着しやすく、また磨き残しが生じやすいところです。そこで歯周病の予防や治療の効果を上げるためには、ブラッシングによって、いかにこの部分のプラークを確実に落とすかが重要になってきます。
歯ブラシの持ち方には、親指と人差し指で握る方法と、鉛筆をもつような方法(ペングリップ)があります。ブラッシングにはいくつかの方法がありますが、「磨かなければ」という気持ちから力が入ってしまい、ごしごしと強い力でブラッシングをすると、かえって歯肉や歯の根本を痛めてしまうことがあります。買ったばかりの歯ブラシの毛先がすぐ(1週間ぐらいで)開いてしまう人は要注意です。
とはいえ、ある程度のブラッシング圧は歯ブラシの毛先を歯と歯のあいだに届かせるためには必要です。ブラッシング圧は歯ブラシの硬さ、あて方などによって左右されますが、100~300gぐらいが適切です。ブラッシング圧が弱すぎてもプラークは落ちませんから、痛くない程度の適度な強さは必要です。
このように、プラーク・コントロールの効果をより高めるには、ていねいに適度な力でやさしく磨くことが基本となります。

ブラッシングの知識1

2017年3月13日

「ブラッシングは一日に何回、そして一回に何分くらいの時間をかければいいのか?」
このような患者さんからの質問に答えるために生まれたものに「三・三・三」運動がありました。すなわち、ブラッシングは一日三回、食事をしたあと三分以内に、三分間行うのが最も望ましいという考え方です。
しかし、近年の研究では、歯周病の原因となるプラークが歯面に付着するには八時間かかることが明らかにされています。したがってブラッシングも、必ずしも毎食後の三分以内にしなくてもよいと考えられるようになってきました。さらに現在では、ていねいなブラッシングをするのであれば、ブラッシングの回数は一日一回でもよいというのが一般的な意見です。
この一回は、一日のうちのいつでもいいのですが、とくに寝る前が望ましいとされています。なぜなら睡眠中は唾液の分泌量が減り、プラークが成長しやすくなるので、就寝前のブラッシングはプラーク生成を抑制する点でより効果的です。
ブラッシングの効果は、決して回数によるものではありません。短時間で不十分なブラッシングを一日三回するよりも、一日一回ゆっくり時間をかけ、ていねいにしたほうがはるかに効果があります。もちろん自分のブラッシングに不安のある人は、「1日三回食べたら磨く」を基本にしてもよいのですが、より重要なことは、正しくブラッシングができているかです。
このめやすとして、どんなブラッシング方法でも正しくていねいに行えば、三分以上はかかります。一度自分のブラッシング時間を測ってみると良いでしょう。

歯周炎で行う治療とは5

2017年3月10日

その他の治療法
歯根歯槽粘膜形成術
歯肉歯槽粘膜形成術とは、口の中の清掃性や審美性を考え歯周組織の形態を整え、歯周組織の健康を維持できるようにするために行われる外科手術のことです。
小帯(歯肉の根元についているひだ)が長く張っていて歯を磨きにくくしている場合に、小帯を取り除く小帯切除術や、限局的に歯肉が退縮し、歯根面が露出している場合に、その部分に別の歯肉を移植する遊離歯肉移植術などがあります。
エムドゲイン
エムドゲインは、新しい歯周組織再生誘導材料です。主成分は、子どもの歯周組織ができるときに重要な働きをするたんぱく質の一種である、エナメルマトリックスたんぱくです。
術式は、前日したフラップ手術に準じています。手術部位にエムドゲインを塗布することにより、歯周組織の発生過程に似た環境を再現します。こうして、はじめて歯周組織ができたときと同じような、強固な付着機能をもつ組織の再生を促すのです。(健保適用外の治療です)
レーザーを用いた治療
高齢化社会を迎えた現在、高血圧、糖尿病など、何らかの全身疾患を有する患者さんが増えています。このような患者さんでは、全身管理や術後の感染に注意が必要になることはいうまでもありません。
レーザーは、治療時に痛みをほとんど伴わないため麻酔を使用しない処置が可能であり、切開などを行う場合にも、ほとんど出血しないばかりか、殺菌効果があるため、術後の感染防止に対しても有効であるなどの理由から、広く使用されるようになってきています
現在の歯周治療において、このレーザー処置は、おもに歯周ポケット内照射による毒素の除去、歯肉の変色による処置(歯肉のメラニン沈着の除去)、象牙質知覚過敏症に対する処置などに用いられています(健保適用外の治療です)。

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