2017年1月30日
ブラッシング
歯周病を引き起こすものはプラークであり、プラークを除去することが、歯周病の予防や治療においてきわめて重要であることが、理解いただけたと思います。
さて、実際にプラークを除去するために、最も効果的なものは歯ブラシを用いたブラッシングであることはいうまでもありません。歯の表面や歯の溝に着いたプラークは虫歯の原因になりますが、歯と歯茎の境目や歯と歯のあいだに付着したプラークは歯周病の原因となります。
プラークを効果的に除去できるブラッシング方法に、スクラッビング法があります。この方法は、歯ブラシの毛先を使ってプラークを除去する方法であり、誰でも簡単に行うことができます。また、歯ブラシの腹を使って歯肉をマッサージする方法もあり、炎症を生じた歯肉の回復に効果があります。
しかし、歯ブラシによるブラッシングだけでは歯と歯のあいだ、つまり歯間部についたプラークを除去することは不可能であり、補助的にデンタルフロス(糸ようじ)や歯間ブラシなどを用いなくてはなりません。
歯肉炎や歯周炎が最初に起こるのが歯間部ですから、このような用具を用いて、すみずみまで口腔清掃することが大切です。
2017年1月27日
年齢
歯周病はお年寄りの病気、そうでなくとも中年以降にかかる病気だと思っている方が多いと思います。たしかに40~50歳代になると、約88%の人たちが歯周病に罹患しています。しかし、歯周病は歯肉炎と歯周炎を含むわけですから、極端な話をするならば、歯が生えたと同時に歯周病になってもおかしくはないわけです。
歯肉炎と歯周炎の年齢分布を見てみますと、歯肉炎は歯の萌出後、徐々に増加し、10~15歳のあいだにピークがきて、その後徐々に減少していきます。実際には歯肉炎が減ったわけではなく、歯肉炎が歯周炎と進行していたわけです。20歳を過ぎたあたりから、歯肉炎と歯周炎の比率は逆転し、以後、歯周炎が増え続けていきます。
このような過程を示すのが一般的な歯周炎で、成人性歯周炎といいます。ほかにも遺伝的要因のところで述べた前思春期性歯周炎では、10代前期に歯周炎が発症し、急激に進行していきます。また若年性歯周炎は10代で、急速進行性歯周炎は20~30歳代前半で発症し、いずれも急速な歯周炎の進行をみます。
2017年1月25日
遺伝的要因
歯周病は、細菌による感染症であり、細菌由来の病原因子(細菌の量・種類、細菌の付着期間)が、生体の持つ抵抗性の閾値を超えてしまうことで発症します。しかし、若くして発症し、急速に進行するある種の歯周疾患では、1960年代後半から、家族性に多くの発症がみられることが報告されるようになり、遺伝的な因子の存在が考えられるようになりました。つまり、遺伝的な素因が強ければ、細菌の量が少なくても、細菌に感染している時間が短くても、歯周病が進行ししまうことになります。
実際に前思春期性歯周炎、若年性歯周炎、急速進行性歯周炎といった早期に発症し、進行の早い歯周疾患では、生体における防御機構のどこかに遺伝的な破綻が生じていると考えられています。しかし、現在のところこのような歯周疾患に関与する遺伝子の特定は行われておらず、いまだ研究の段階です。
ただし、家族性に発症する歯周疾患の場合は、家族間で歯周病原菌が親から子へと垂直感染することも考えられます。また、歯周病を起こしやすい習癖や嗜好、歯ブラシの使い方などが似ていることも考えられ、歯や歯茎のかたちが似ていることも考えられます。
このように、いちがいに遺伝的な因子が関与していると断定しにくい点も、歯周疾患の遺伝的要因の研究を難しくしています。詳細については今後の研究を待たなくてはなりません。
2017年1月23日
歯周炎
歯肉炎の状態を放置したり、気がつかないでいると、歯肉に限局していた炎症は周囲に広がり、歯肉の下にある歯を植える骨(歯槽骨)や歯と骨をつなぐ歯根膜、セメント質を破壊していきます。この状態にまで進行すると歯肉炎ではなく、歯周炎という名前を使うようになります。
歯周炎は組織の破壊状態により、軽度歯周炎、中等度歯周炎、重度歯周炎に分類されます。
いずれにしては歯周炎になると、どんなに歯垢を取り除き、プラーク・コントロールを行っても、けっして正常な状態にまでは回復することはありません。
軽度歯周炎では、歯肉炎と同様に大きな自覚症状はなく、ブラッシングやものを食べたときなどの歯肉からの出血がおもな症状となります。
中等度歯周炎になると、歯のぐらつきが起こりはじめ、歯茎から膿が出たり、歯茎が腫れたりするようになります。歯を植えている歯槽骨が破壊されることで歯茎がやせ、歯が伸びたように見えたり、歯と歯の間の隙間が広がって見えたりします。また、歯周ポケットから出る膿や歯の表面に蓄積した歯垢により、口臭が発生することがあります。
重度歯周炎では、歯のぐらつきがさらに大きくなり、ものが噛みづらくなり、歯があちこちに移動するようになります。そして最後には歯が抜け落ちてしまいます。なるべく早い時期に歯周治療を受けることが大切で、あまり重度になってしまうと歯を残すことが難しくなります。
以上のように歯周炎では、歯肉炎が進行して生じること、一度歯周炎になると、もとどおりの正常な状態には戻らないこと、早期に歯周治療を受けることによって歯周病の進行を止めること、放置すると歯が脱落してしまうことなどが特徴といえるでしょう。
2017年1月20日
歯周病は大きく分けると歯肉炎と歯周炎とに区別されます。この二つのちがいを理解しておくことは、治療を受ける上で大変重要となります。
歯肉炎
歯茎に歯垢が付着すると、歯肉に炎症が起こり、赤みがかった色になり、膨らんで丸みを帯びた形になります。また炎症を起こして弱った歯肉は、ブラッシング(歯磨き)や固いものを噛んだときなどに出血することがあります。これが歯肉炎の状態です。
大きな自覚症状はなく、見過ごしてしまうことが多いため、鏡などで歯と歯のあいだの歯肉をよく観察することが必要です。健康な歯肉はうすいピンク色で、引き締まっています。赤みが強くなっていれば、すでに炎症が起きている証拠です。
しかし歯肉炎の状態では、歯を植えている歯槽骨にはまだ炎症が及んでおらず、正常な状態を維持しています。ですから歯肉炎であるうちなら、十分なブラッシングにより歯垢を除去することで、歯肉は正常な状態に回復することができます。
2017年1月18日
歯肉の部位ごとに歯周病の起こりやすさをみると、最初に炎症が引き起こされるのは、歯と歯の間にある歯間乳頭歯肉とよばれる歯肉であり、ついで歯を取り囲む辺縁歯肉に炎症が生じ、さらに炎症が強くなると歯肉全体にまで炎症が及ぶことになります。
歯と歯のあいだの歯垢は、ふつうの歯ブラシでは完全に除去するのがとても難しいため、デンタルフロスという、いわゆる糸ようじを使って清掃したり、歯の隙間が大きいときには、歯間ブラシという歯のあいだを磨く専用の歯ブラシを用いなければ、十分に予防することはできません。
そのほかにも、歯並びの悪いところでは歯垢がうまくとれないことから歯周病になりやすく、うまく歯に合っていない不良な補綴物(入れ歯、詰め物、被せものなど)をもつ歯も歯周病にかかりやすくなります。
また、入れ歯の留め金をかけている歯は、歯垢が付着しやすいばかりでなく、入れ歯に加わる強い力が歯に伝わり、歯周病を進行させる危険性があります。
まれに若年者に発症する歯周病である、若年性歯周炎では、中切歯と第一大臼歯(六歳臼歯)に特異的に歯周病が進行することがあります。
2017年1月16日
歯肉が腫れ、歯と歯茎の隙間が広がって、いわゆる歯周ポケットを形成するようになると、深い歯周ポケットの底には、空気を嫌う嫌気性細菌が増えてきます。この嫌気性菌の多くが歯周病原菌で、歯肉に炎症を起こし、さらには歯を植えている歯槽骨を溶かしていくことになります。
細菌の種類としては、成人性歯周炎をひきおこすポリフィロモナス・ジンジバリス、妊娠性歯周炎や思春期生歯周炎などを引き起こす、プレボテーラ・インターメディア、若年性歯周炎を引き起こすノバシラス・アクチノマイセテムコミタンスなどが知られています。
歯周病原金は直接的には種々の酵素(タンパク分解酵素、ヒアルロン酸分解酵素など)や、細胞に対して毒性を持つ物質(酪酸、硫化水素など)の働きを用いて歯周組織を侵襲します。また、細菌自体を構成する物質(菌体内毒素などのリポ多糖=LPS、ロイコトキシン)などは、歯周組織内で免疫反応を引き起こすことで、間接的に歯周組織を破壊させることになります。
すなわち、細菌により歯肉が腫れ、歯周ポケットが形成されると、歯周ポケットの底に空気を嫌う嫌気性の歯周病原菌が増え、これらの細菌により直接・間接的に歯周組織に炎症が生じて、歯周組織の破壊が進むことになります。強い噛み合わせなども歯周病を進行させますが、基本的には細菌が存在しなければ歯周病は生じません。
2017年1月13日
歯周病が、口腔内の細菌により引き起こされることは古くから考えられていましたが、1900年半ば頃まではプラーク(歯垢)中に見られるすべての細菌種は、歯周病を同じように引き起こすことができると思われていました。そして歯周病は、歯肉へのプラークの長期間にわたる接触により引き起こされると考えられていました。
1960年代になると、健康な部位と疾患におかされた部位では細菌の形態にちがいがあることが明らかとなり、歯周病に特異な細菌つまり歯周病原菌の存在がやっと考えられるようになりました。
プラークは、ほぼ80パーセントが細菌の固まりで、その湿重量は1mg程度であり、なかに約数億もの細菌がいるといわれています。歯垢ともいわれていますが、いわれる通常の皮膚などに生じる上皮が剥離した垢ではありません。
プラーク中には100種類を超える細菌が存在し、そのうち十数種類の細菌が、歯周病の発症に関係する歯周病原菌であることが明らかになってきました。
このような歯周病原菌のうち、アクチノマイセス・ビスコーサスやアクチノマイセス・ネスランディといった細菌は、歯と歯茎の境目に存在し、歯肉炎を引き起こします。
2017年1月10日
寝ている間の歯ぎしりも、歯周組織を刺激して咬合性外傷に結びつくことがあります。歯ぎしりは、寝ている間に上下の歯をギリギリと強い力でこすり合わせるので、あたる歯がしだいにグラグラしてくることがあります。歯周組織も刺激を受けますから、歯肉に炎症が起きてしまうことがあるのです。
ただ、歯ぎしりが歯周病に与える影響としては、物理的要因よりも、歯ぎしりをするような心的要因のほうが大きいでしょう。歯ぎしりをする人は過剰なストレスがかかっている場合が多く、それを解放するために行う自然の行為なのですが、そのストレスの影響で免疫力が低下し、歯周病を発症しやすくするというわけです。
また「大きく口を開けるとあごが痛い」、「口を開けたときに、あごがカクンカクン、コツコツと音がする」などがみられたら、顎関節症の疑いが濃厚です。顎関節は、ちょうど耳の前にあり、下顎骨と側頭骨をつなぐ関節になります。主な原因には、かみ合わせの悪さがあげられますが、ストレスや運動不足、姿勢の悪さなども影響しているようです。顎関節症をそのままにしおくと、かみ合わせの悪さから歯周病も発症しやすくなるうえ、肩こりや腰痛などの全身症状も進みます。症状がみられたら、一度歯科でチェックしてもらいましょう。
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2017年1月6日
悪いかみ合わせのことを、不正咬合といます。このうち、歯周病の原因となる外傷を引き起こすようなかみ合わせのことを、外傷性咬合といいます。
外傷が起きるには、さまざまな原因があります。例えば、むし歯を治療しないで、そのまま放置しておいたり、歯が抜けたままにしておくと、歯並びがおかしくなってきます。内側に入り込んだ歯や、外に飛び出した歯などがあり、歯列がデコボコになってしまいます。デコボコの歯列のうち、くぼんだ部分は汚れがたまりやすく、飛び出た歯も唇に触れやすいので汚れが付着しやすくなります。そのうえ、このような場所は歯磨きもしづらいため、プラークが増えて歯周病にかかりやすくなります。歯周病を発症した場合も、病気の進み方が早くなる傾向がみられます。
不適切な歯科治療が原因で、外傷性咬合になる場合も少なくありません。歯科治療を受けたあと、かみ合わせのチェックをしますが、これがきちんと行われていないと、あとで歯周病を引き起こすことになりかねません。
歯には、山の部分と谷の部分がありますが、それぞれに意味があるのです。かみ合わせたとき、上の歯の山の部分に下の歯の谷の部分が入っているでしょう。これがうまく適合していないと、かみ合わせがおかしくなってくるのです
そのため、治療で義歯やブリッジなどをしたあとも、かみ合わせが左右対称になるようきちっと調整します。ふつう翌日になれば、なじんでくるものですが、まだ違和感が残っているときは、かみ合わせをみてくださいと言っても一度見てもらいましょう。
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