歯牙移植の20年後
2014年12月16日
20年前に移植した歯を検診することができました。
主訴は”右上第一大臼歯の歯茎が時々痛む”ということで来院された患者さんです。
根尖部に病巣はありませんが根管内に未処置部分が多くあり、それが原因で症状がでていると思われます。
再根管治療が必要と判断して、ラバー防湿をおこない根管治療を始めましたが、根の付け根部分に大きな穴が開いていました。
穴が開いているのは頬側の根の分岐部で、レントゲン写真により事前に確認することはできませんでした。
患者さんは20歳の前半で、なんとか自分の歯を残したいと希望されましたが、治療は困難と判断して抜歯することに・・・
先天的に第ニ大臼歯がなく、この歯がなくなると義歯かインプラントを考えなくてはなりません。
幸いにも左下に咬合(噛み合わせ)に関係していない智歯(親知らず)があり、大きさも同じくらいで、この歯を移植することにしました。
移植後に根管治療をするのですが普通だと思いますが、移植する歯牙が智歯のため根管の形が複雑で十分に根管治療できない可能性も考えられます。
そのため、移植歯を事前に根治、根充をして移植する時点で根尖部に未処置の根管がないか精査することにしました。
根管治療を終え、いよいよ、移植の日です。
まず、右上第一大臼歯を抜歯、そして抜歯窩(抜歯してできた穴)をきれいに掻把。
左下の智歯を抜歯して先ほどできた抜歯窩に試適してみると、ちょうど良い大きさで歯槽骨を削ることもなく移植できました。
移植後は前の歯と連結し、下の歯と咬まないように噛み合わせを調節して移植歯が安静になるようにします。
移植直後のレントゲン写真です。
治療後は痛みはなく良い経過を辿られました。
その後、移植歯の動揺が減少して安定な状態になったことを確認して補綴処置をしました。
時々、レントゲン写真で移植歯の状態を確認してきましたが、痛みや違和感はなく、食事もなんの制限なく美味しく食べられるそうです。
移植したことを忘れ、以前からあった歯のようだと喜んでいただいています。
移植後、20年のレントゲン写真です。
何ら問題ないと思います。
名古屋 中区 栄 一壺歯科医院