親知らずの抜歯を勧められましたが・・・
2014年8月2日
“他院で親知らずは不要だから抜歯を勧められたんですが本当ですか?”と来院されました。
その歯は、詰め物がとれたまま放置されていて、時々、奥の方が痛むそうです。
初診時の写真とレントゲン写真です。(左下の親知らず)
虫歯が進んでいるために歯髄(神経)は壊死していて、歯根の分岐部を含んだ大きな根尖病巣があります。
更に、近心根が強く曲がった状態であることがわかります。
親知らずのため機具の操作が困難なことや、根管の形態が複雑なために治療が困難であることをご説明しましたが、ご本人のご希望で治療してみることになりました。
虫歯が深く、歯の崩壊が大きいため隔壁を製作して、いつもの様にラバーダム防湿をして治療を行いました。
近心根に根管長測定のためファイルを挿入すると歯根が曲がっている付近で穿孔(パーコレーション)しているのがわかりました。
本来の根管を慎重に探しましたが見つけることが出来ず、穿孔部まで拡大、清掃して十分に消毒後、根管充填しました。
アクセス出来なかった部分が長いため病巣が治癒するか疑問でしたので、予後不良の場合は意図的再植を行うことをご説明しました。
根充後のレントゲン写真です。
根充後6ヶ月の状態です。分岐部が改善しています。
1年6ヶ月後の状態です。分岐部、根周囲の透過像はなくなり治癒しています。
曲がっている歯根部分が未処置にも拘らず病巣が治癒したのは、アクセス出来た根管内の細菌数を減らすことが出来、その部分を緊密に封鎖が出来たため、新たな細菌が病巣に供給されなくなったためではないかと思います。
根尖まで根管充填することは重要なことですが、それ以上に細菌の数を減少させ緊密に封鎖することの方が重要であることを実感した症例です。
名古屋 中区 栄 一壺歯科医院