2017年5月5日
日本では自由開業制というものが認められていますから、全く臨床、すなわち実際の患者の治療を経験していなくても、大学卒業し、国家試験を通れば、一人前の歯医者と認められ、開業し、患者を診ることができるわけです。これではその歯科医にかかった患者が、ほとんど人体実験の対象になってしまうわけです。中には、6年間の歯学部在学のみが将来の優位性を決定すると誤解している方も多いようです。大学を出て国家試験に通ることは、単に出発点に立ったにすぎません。
そこで、この憂慮から、卒後研修の必要性が唱えられてきて、卒業後二年間は強制的に研修を受けさせるようなかたちになってきました。しかし、施策の実現には、いろいろな要素がかかわっていて、なかなか簡単に実現しそうにもありません。卒後研修というのは、いわゆる大学における教育とは違います。実際の患者の歯科口腔疾患にどう対応していくかということが中心になるわけです。トータルな人間教育も、臨床の理論や技術に加えて研修生につちかわれていかなければなりません。それこそが重要な課題と考えていかねばならないような気がします。
まさしく、それは今の大学教育の中でも一番欠けている点ではないでしょうか。この部分を指導する人々の全人的資質が求められ、大変重大なことです。
2017年5月3日
ここ数年来、医学部あるいは歯学部の入学時に要する多額な入学金・寄付金等にからんで医師の質の低下を心配する声があります。国家試験に関してもずいぶん大きな話題を提供しております。国家試験を難しくして、質の悪い人間を医者にさせない、歯医者にさせないという発想が、その主流をなしているわけです。
しかし国家試験をただ難しくすることだけが、ほんとうによい医者を育てることにつながるのでしょうか。歯科大学や医科大学がだんだん医学教育的な本来の目的からはずれ、極端な場合は最終学年が国家試験のいわゆる予備校になってきています。大学の教育者たちが国家試験の合格率に一喜一憂しているというのが、偽らない現状ではないでしょうか。こんなことでは将来に非常に不安を感じます。
2017年5月1日
今後の患者は、ただ盲目的に歯科医に追随するだけではいけないと思います。もちろん患者は、素人の域を出ないわけですから、専門家である歯科医の意見を尊重していただくことは、極めて重要なことです。しかし、患者の立場でも、それなりの正しい知識を得ていただきたいのです。インフォームドコンセント(有識の同意)を得ながら、望ましい治療を歯科医と患者で構築していくという姿が求められるのではないでしょうか。それこそが「無駄のない医療」を生み出していき、また「歯をいつくしむ」良い医療を育んでいくのではないかと思います。
医療の現場は、自然の摂理と科学の力を医者と患者がお互いに確かめ合う、そんな場所であってほしいものです。診療室には「人間の科学」を証明する生き生きとした姿が見られるはずです。病が治癒した事(科学の力と自然の摂理・調和)を、患者の喜びに、そして医者の楽しみとするような状況、それが「新潮流」の医者と患者の人間関係のはずです。そういう状況を生み出すことが、これからの課題ではないでしょうか。