虫歯の正体はこうしてわかった1
2017年7月15日
1890年にアメリカのW.D.ミラーという歯科医が「口腔の微生物」という著作で「化学細菌説」を発表しました。
彼は歯科医でもあり、同時に細菌学も学んだ人で、その知識と技術を歯学の領域に生かそうと試みた人です。
この本によれば、歯の表面に存在する細菌が、歯の溝やくぼみ、歯と歯の間の接触部分に溜まった食物を利用して、「酸」を作り、その酸によって歯の表面のエナメル質や象牙質が溶かされて(専門用語で「脱灰」といいます)できたのが虫歯であるというのです。
食物を分化して算出される主な酸は乳酸であるとしています。
ただし、ミラーは、唾液中の細菌によって作り出される酸だけで歯の脱灰が起こると思っていたようです。
また、虫歯を引き起こす細菌は数種類あるらしいと考え、虫歯菌そのものについては、それ以上探求していませんでした。
そして、1920年ごろ、虫歯菌の正体として「乳酸桿菌」という細菌が注目されるようになりました。これは、口の中や腸、女性の膣の中に常にいる菌で、虫歯の病巣からしばしば見つけられ、酸を作り出します。
また、そのように酸を算出しつづけて強い酸性の条件下でも生存能力が高いということで、以来約40年間決定的な科学的証明もないままに虫歯の原因菌としての地位を獲得してしまいました。