人工歯では再生できない「歯根膜」
2016年9月23日
セメント質と歯槽骨の間には、「歯根膜」という膜が存在します。歯根膜は線維が集まってできた組織(線維性結合組織という)で、簡単に歯が抜けないよう歯根と歯槽骨をしっかりつなぐ役目をしています。ただ、つなぐといっても、接着剤のように歯を歯槽骨に固定しているわけではありません。
上下の歯をゆっくり噛み合わせていくと、わずかな弾力を感じていただけるはずです。この弾力をもたらしているのが歯根膜です。歯根膜はハンモックのように歯をつっているのです。そして、噛むたびにわずかに上下する遊びがクションとなり、歯槽骨への衝撃を吸収しています。
また、食べ物を噛むときの微妙な歯ごたえや歯ざわり。これらを感じ取るのも歯根膜の働きの1つです。歯根膜を通っている神経の端には「歯根膜受容器」があり、物を噛んだときの刺激をキャッチして脳へ伝えます。これによって、特に意識せずとも硬いものは強く、やわらかいものは弱く噛めるようになっています。砂などの異物を噛んでしまったときも、歯根膜がいち早く脳に違和感を伝え、噛むという行為をストップさせます。
食べるという動作に非常に重要な役割を担う歯根膜ですが、歯を失うと歯根膜も一緒に失われます。近年は、歯冠部分は精巧な人工歯によって再現できるようになっていますが、歯根膜の代わりはありません。人工歯根膜の研究も進められていますが、広く実用化されるのはまだ少し先の話でしょう。
持って生まれた歯にかなうものありません。可能なら、生涯自分の歯でかみたいもの。しかし、歯を失う最大の原因である歯周病では、その土台である歯槽骨や歯根膜も少しずつ失われていくのです。
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