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調整の少ないクラウンを目指して (その1)

はじめに

クラウン

技工学校在籍中に初めてセットされたクラウンは、口腔内でバサバサ削られて咬合面形態が無くなってしまいました。歯科医師の先生と話し合い「調整の少ないクラウンを作ろう」ということになり、そこから挑戦が始まりました。模型の作り方、トリミングの方法、フィットの仕方などの研究を始めました。9ヶ月後には殆んど調整のいらないクラウンができるようになりました。2年生(昭和51年9月)のときに火曜会の勉強会(歯科医師向け)で、無調整ウクラウンの発表をしました。その時に、クラウンの内面にシリコンを入れて適合状態を調べていました。その後GCからフィットチェッカーとバイトチェッカーが発売になりました。

咬合調整をするということは、顎位が変わってしまうことにつながります。顎位を変えないためには無調整でセットできるクラウンが必要であると考えています。右上の写真は無調整でセットされたクラウンです。4か月後の状態ですが、ファセットはどこにもできていません。コンタクトに関しては、対合歯によってもずいぶんと変わるので、ある程度の調整が必要になることがあります。このような仕事が常にできることを、私のラボの目標にしています。日常の技工作業を、工程を追って説明いたしますので、参考になれば幸いです。

模型作り

模型

歯科医院から預かった石膏模型は除菌のために、電解アルカリ水(右の写真)や塩素系除菌剤スプレー(ぺリオプラスなど)をかけます。これらの処理剤はタンパク質を分解することで菌や付着したダニなどを殺します。その後、70℃で90分間保温します。

食器乾燥器

保温には、価格が安いので家庭用の食器乾燥器を利用しています。この機種では温風の吹き出し口の温度が90℃以上になるので、ブリキ缶のふたを置いて熱風が直接当たらないようにしています。また、乾燥器のふたを少し開けて庫内の温度を調節しています。

石膏

石膏は75℃以上に加熱するともろくなったり、変形を起こしたりするので注意が必要です。この保温器のタイマーは45分間なので2回連続で使います。要は乾けばよいのでほかの方法でも良いですが、保温する場合は70℃以上ならないようにしてください。

塩素系徐菌剤

ワックスやシリコンのバイト、シリコン印象、インプラントの部品などは、歯科医院で使われている塩素系徐菌剤(医療用ハイターやキッチンハイターなど)を薄めた溶液に30分から1時間浸けて除菌処理をします。

保温庫で乾燥した模型は室温までさまし、それに石膏表面硬化剤のアルファーコートやサンエスコートを2~3回塗布します。液は浸透しますので皮膜はできませんが、模型の温度が高いと皮膜ができることがありますので注意が必要です。防水効果はありませんが石膏は固くなります。乾燥に時間がかかるのが欠点です。急ぐ時は一回塗布し、次にラボシアノン(瞬間接着剤)を使うこともあります。表面硬化剤を2回塗布した模型です。支台歯に付着した寒天などは、瞬間接着剤と違い後から簡単に取り除くことができますので、安心して使用できます。

表面硬化剤が完全に固まったらモデルトリーマーにかけて、ピンホールを開け、回転防止溝を掘ります。ダブルフラットでプラスチックケース付きのダウエルピンを中粘度瞬接硬化型模型修復材(三金モデルリペアー)で固定します。石膏分離剤(カースーパーセップ)を塗布し、基底面とダウエルピンのまわりに超硬石膏を盛り上げて硬化させます。その後、盛り上げた石膏との接着性を高める目的で、超硬石膏にボンディングストーン(チョーワ)を少し混ぜて練和した石膏に埋め込み、模型の台をつけます。

エポキシ系模型

右の写真のケースでは支台部分をエポキシ系模型材のロックモデル(クワタカレッジ)を使用しています。この材料は他の樹脂系模型材料(ウレタン系の製品)や石膏と比較して、印象の再現性が高く、精度も良いこと。また、硬くてマージンがチップしにくいことから、適合精度を追求するには最も適した材料であるといえます。

石膏模型で高い精度の適合を追求する場合には、分割していない歯列模型と、支台歯模型2本を使うマルチプル模型で作業することで実現することができますが、手間がかかるので10年程前からは、上記の方法で作業をしています。

プロフィール

檜田健幸

檜田健幸(ひのきだやすゆき)

出身地 青森県白神山地(世界遺産)
ラボ 東京都武蔵野市吉祥寺本町4-9-14
シティパル吉祥寺103

(有)アペックス

著書 月刊「歯科技工」別冊Build up徹底マスター セラモメタル築盛技法の中で「アナトミカル・シェーディング・テクニックによる多色盛」を担当

その他 著書多数

調整の少ないクラウンを目指して (その2)

トリミング

模型

作業模型の歯列を模型台から外し、ダイヤモンドディスクで正中部に頬側から切り込みを入れて、左右に分割します。これは、支台歯の分割をしやすくするためと、作業中に左側歯列を外すことで製作するクラウンの舌側咬頭(下顎では中心窩)を直視するためです。支台歯部は最初に咬合面から薄いディスクで切り込みを入れます。その後、大きいディスクを使い、頬、舌側から切り込みを入れて分割します。

ダイヤモンドディスク

模型の分割に使用するダイヤモンドディスクです。石膏分割ノコは現在使用していません。
左は支台歯切り込みに使う薄いディスク右は側面からの切り込み用の大きいディスク(ホリコ社)

器具

石膏模型トリミング用のポイント、器具です。
左からクロスタイプのカーバイトバー
ポーセレン研磨用ホイール(荒目、黄色)
研磨ホイール(細目、白)
エナメルバー699L(エメスコ社)
デザインナイフ

石膏模型

石膏模型は、カーバイトバーで荒削りをし、シリコンホイールで仕上げをします。大臼歯の根の分岐部のトリミングは、エナメルバーやデザインナイフを使用します。削除した部分は補強の目的で瞬間接着剤(ラボシアノン)を塗布します。マージンラインは三菱ユニの6Hを使います。

トリミング

エポキシ模型トリミング用ポイント
ヒートレスホイール(ブッシュ)
ダイヤモンドバー102ファイン又はレギュラー

マージン

エポキシやウレタン系の模型材は、ヒートレスホイールが適しています。マージン部の仕上げにはダイヤモンドバーのファインかレギュラーの切れの悪くなった物をエアータービンに付けて使用します。
歯軸に対して15~30°のアンダーカットを付けておくことで、スキャンしたときにマージンが分かりやすくなりますし、ワックスアップの仕上げでは、過不足のないシャープなマージンが効率よく得られるからです。

マイクロスコープ

トリミングは20~30倍のズームタイプのマイクロスコープをのぞきながら行います。当社においては、入社10年以上の技工士でないとトリミングはさせないことにしています。してもらった場合は必ずベテランがチェックをして必要であれば手直しをします。これは、適合の良いクラウンを製作するためには最も重要な作業であると考えているためです。

咬合器マウント

咬合器

咬合器に模型をマウントするときは、写真のようなジグを使用します。上顎模型を基準の位置に置くだけで誰でも標準的なマウントができます。ディナーマークPの場合は開発者の波多野先生の考えを基準にして、盛り上げた石膏の上にアルミ板を載せた手作りのマウント台で、もう36年も使い続けています。フェイスボートランスファーしない場合はすべてこの方法です。

マウント

バイト(このケースはレジンバイト)に合わせて下顎を固定し、石膏でマウントします。石膏硬化後、インサイザルピンはテーブルに接触しています。
(マウンティングストーン ウイップミックス社)

バイト

バーティカルを合わせるために、歯列模型を外して、5にバイトを咬ませます。

固定

咬合器上の補綴部位が口腔内と同じ高さになるようにするために、その高さでインサイザルピンがテーブルに着くまで下げて固定します。

歯列模型

歯列模型を戻すとピンが少し浮き上がります。これは歯列模型にゆがみがあるためです。

咬合紙

このケースでは、咬合紙で当たりを調べると、歯列の前歯部(青色の部分)が強く当っています。削除調整をしていくと左側臼歯部も咬むようになりました。(赤の部分) 咬合紙は、ハネルの両面幅広タイプで、青、緑、赤の順で使用します。

ワックスアップ

対合歯の下顎6のワックスアップは、上顎のブリッジを製作するための基準にするものです。この写真は完成後のものですが、作業工程の咬合調整ごとに青、緑、最終確認が赤で行われていることが分かります。(対合歯は後で使用するかもしれないので、基本的には削除しません)

咬合調整

上顎作業模型の歯列を咬合調整して、ピンがテーブルに当るようになり、補綴部位の高さが口腔内と咬合器上で同じになりました。

削除調整

別のケースですが、左側臼歯部と前歯部が大幅に削除調整されています。3の近心、4の近心、6の近遠心が強く着色していますので、しっかり咬合していることが分かります。上顎か下顎か分かりませんが、模型のゆがみ相当ある事が分かります。
4はエポキシ、5はインプラントアナログとガム模型、67はダウエルピン付きの石膏歯列(コンタクトポイントの調整を片側ずつ行うため)にしたケースです。

メタルボンド

近心の隙間が少ないために、メタルコンタクトにしたコバルトクロム合金を使用したメタルボンドのケースですが、口腔内での調整なしでセットされました。

ジルコニアクラウン

今回紹介した方法で製作されたポーセレン築盛タイプのジルコニアクラウンのセット後4日目の口腔内写真です。4の近心辺縁隆線のみ、ほんの少し咬合調整されました。

マージン

5の近心は縁上マージンでしたが違和感なく装着されました。

調整の少ないクラウンを目指して (その3)

咬合について

  • 咬合器
  • 咬合

今回も、当ラボで日常手がけている臨床ケースの中から紹介します。左の写真は咬合器にマウントして、前回ご紹介した手順で支台歯部のバイトの高さに合わせて咬合調整された模型にワックスアップしたもので、右の写真は研磨完了後の咬合状態です。口腔内においても咬合調整なしにこれらのポイントが過不足なしに再現されれば、咬合理論に沿って計画されたクラウンができたことになります。

ナソロジー

ここで少し代表的なオクルージョンについて簡単に説明したいと思います。①はナソロジーの図ですが、上顎では頬側咬頭内斜面をA斜面、舌側咬頭内斜面をB斜面、舌側咬頭外斜面をC斜面といいます。下顎では、頬側咬頭外斜面をA斜面、頬側咬頭内斜面をB斜面、舌側咬頭内斜面をC斜面といいます。
上顎では主隆線の近心側にE(イコライザー)があり、それぞれAE(エーイコライザー)、BE、CEとなります。また、AEとBEに拮抗するS(クロージャーストッパー)が近心辺縁隆線の遠心側にあります。BEとCEに対してのSは、舌側咬頭遠心側にあります。下顎にもそれに対応した位置にそれぞれのポイントがあります。絵を重ねてみると良く分かると思います。

ナソロジー

②は田中浅見先生の方式ですが、A、B、C斜面は同じですが、近心側のコンタクトポイントをX、遠心側をY、中央の場合をZとします。BXならばB斜面の近心側のポイント、CYならC斜面の遠心側にあるポイントであると分かりやすくなっています。上顎ではBXがBZに、下顎ではBYがBZになる場合もあります。

ロングセントリック

③はロングセントリック(グループファンクション)の図です。下顎の頬側咬頭頂が上顎近心辺縁隆線と、上顎舌側咬頭頂が下顎遠心辺縁隆線と接触しています。コンタクトポイントの位置と、ガイドの位置は別になっていて、下顎頬側咬頭遠心部が、上顎頬側主隆線の近心側と接触滑走します。

フルバランス

④はフルバランスですが、これもA、B、C斜面になっています。A斜面、C斜面にはそれぞれ近心小面と遠心小面があります。B斜面には上下とも平行咬合小面あります。

側面図などがあれはより分かりやすいと思いますが、興味のある方は専門書がいろいろとありますので調べてみて下さい。

  • 臨床
  • 頬側
  • 臨床
  • 頬側

写真左上、左下は臨床のケースですが、ワックスアップ完成時の咬合ポイントをマークしてあります。上下顎のケースですので、どの咬頭がどこに咬み込んでいるのかが良く分かります。ナソロジーの咬合様式で3点接触が基本になりますが、臨床では図で示したような理想的な位置に必ずしもコンタクトポイントができません。大事なのは「A斜面の○○に○○が当たる」、「B斜面の○○にイコライザーがある」などの条件を自分で探して機能(ファンクション)させることです。理想的な絵を覚えることも必要ですが、そのコンタクトは何のために必要なのか、どうしたらその機能を与えることができるのかを良く考えるとおのずとどうしたらよいのかが見えてきます。整ったきれいな形の歯にならなくても機能的な咬合を与えることが最も重要なことです。写真右上、右下は頬側、舌側面観です。

  • ステイン
  • ジルコニアクラウン

写真右はワックスアップを元に半焼結ジルコニアクラウンを削り出し、焼結後に研磨した状態のものです。写真左はステインをして完成したジルコニアクラウンです。

今ではスキャナーで模型を取り込んで、CADで見た目にもきれいなクラウンが誰でも簡単にデザインできる時代になりましたが、それが機能的かどうかは別問題だと思います。コンピューターではできない、熟練しないとできない補綴物の作れるラボになりたいと思い日々精進しています。

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