意図的再植術
2016年1月6日
右下が飲酒した際に鈍痛があるとの主訴で来院されました。
口腔内の診査では、第2大臼歯に打診が少しみられ、第1大臼歯の遠心と第2大臼歯の近心に深いポケットがありました。
レントゲンを撮影すると、第1大臼歯の遠心に2次カリエス(むし歯)がありますが、今回の主訴の原因は第2大臼歯の根尖病巣ではないかと思われます。
黄色の点線部分は根尖病巣、青で囲まれた部分は骨欠損(骨がなくなっている所)
ラバー防湿を行い根管治療をいたしました。
根充後(薬を詰めた後)のレントゲン写真です。
第1大臼歯のカリエス(むし歯)も治療し、その後、何ら疼痛や違和感などなく生活されていましたが、治療終了から4年後に再び第2大臼歯が痛くなり再来院されました。
レントゲン撮影をすると、病巣が根尖(根の先)の周囲に広がっています。
現状をご説明して、治療法についてご説明しました。
原因は、根尖部の側枝やイスムス(複数の根管の交通路)の存在、根尖の破折、歯根の外側のバイオフィルム(細菌の凝集塊)などが考えられます。
治療法は外科的処置が考えられ、歯根端切除術と意図的再植術があります。
歯根端切除術は部位が下顎第2大臼歯のために術野の確保が難しいこと、器具が到達しないこと、また、頬側の骨が厚いため骨を削除する量が非常に多くなってしまうなど問題があるため、意図的再植術を選択しました。
第2大臼歯を一旦、抜歯して口の外で根尖(根の先)の3mmほどを切断、そして、その断面にみられる根管を拡大してMTAというセメントを充填します。その後、もとの場所にもどして歯が動かないように簡単な固定をしました。
術後のレントゲン写真です。
(オレンジの線で囲ったところがMTAセメント)
術後6ヶ月のレントゲン写真です。
2年後の状態です。
根尖周囲の病巣の改善がみられます。
3年6ヶ月の状態です。
病巣はなく、正常な状態を示す歯根膜(歯と骨をつなぐ膜)も確認できるようになってきました。
痛みや違和感などなく、生活の支障となることはなくなりました。
名古屋 中区 栄 一壺歯科医院