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2013年6月27日

印象採得体の消毒

滅菌対策臨床で消毒に悩むもののひとつにアルジネートで印象採得(型取り)されたものがあります。
口腔内は300種類以上の細菌やウイルスが存在していることが知られており、これらの細菌、ウイルスは唾液や血液と共に印象採得の際、印象物の表面に付着して感染源となりますが、アルジネートは加熱や圧力による消毒には適していないため、クラスBのオートクレーブによる消毒が出来ません。

滅菌対策歯科医療器具を感染リスクの程度別に分類し、必要な消毒法を示している米国疾病管理・予防センター(CDC)のガイドラインで印象採得体の消毒はどのように扱われているのでしょか。

カテゴリー 定義 歯科器具・物品 消毒レベル
クリティカル 軟組織を貫通するもの、骨に接触するもの、または血流・その他の通常無菌状態にある組織に侵入または接触するもの。 外科用器具、歯周スケーラー、手術用メス、外科用歯科用バー 加熱滅菌
セミクリティカル 粘膜または損傷のある皮膚に接触するもので、軟組織の貫通、骨との接触、または血流・その他の通常は無菌状態にある組織への侵入またはそれらとの接触は意図されていないもの。 歯科用口腔内ミラー、アマルガム充填器、再使用可能な歯科用印象トレー、歯科用ハンドピース 加熱滅菌
熱に弱い器具は高水準消毒
ノンクリティカル 健康な皮膚と接触するもの。 X線撮影用ヘッド/コーン、血圧カフ、フェイスボウ、パルスオキシメータ 洗浄
低・中水準消毒

歯科医療における感染管理のためのCDCガイドライン  患者診療器具の感染管理カテゴリー分類

これに従うと、
印象採得体は粘膜に接触するためセミクリティカルとなり高水準消毒が求められます。

では、国内のガイドラインはどのようになっているのでしょうか。

日本歯科補綴歯科学会の"補綴歯科治療過程における感染対策指針"についてのガイドラインでは印象採得体の消毒方法は、120秒間水洗した後、0.1~1.0%次亜塩素酸ナトリウム溶液に15~30分間浸漬するか、2~3.5%グルタラール溶液に30~60分間浸漬することを推奨しています。

当院では、大阪大学大学院歯学研究科歯科補綴学第一教室 助教 江草宏先生のご助言もいただき、より効果的な印象採得体の消毒法として、120秒間水洗した後、印象採得体の表面に付着した生体タンパク質を溶解・遊離させ消毒効果を高めるための0.25%塩化ベンザルコニウムと1%次亜塩素酸ナトリウムの混合液に15~30分間浸漬してほぼ完全な消毒効果を得ています。

これより、院内感染だけでなく、補綴物を製作する歯科技工士が消毒の不十分な印象採得体でつくられた模型をトリミングして、病原微生物が周囲に飛沫して感染することも防止することができます。

歯科治療器具の消毒

歯科治療では抜歯やスケーリングなど観血処置が日常的に行われており治療器具を介して感染が伝播する危険性を含んでいます。

当院では、感染予防のためオートクレーブはクラスBのLisaを使用して滅菌を行っています。でも、クラスBと言うとB級グルメではありませんが大丈夫かな?と思ってしまいます。

このクラスBとは、ヨーロッパの基準によるクラス分けでA,B,C...の順番となっているのではありません。

ヨーロッパの基準によるオートクレーブのクラス分けについて見てみましょう。

種類 表示 対象
Naked Cycle クラス N Solid Unwrapped
裸の固形物
滅菌後直ちに使用
Specific Cycle クラス S Hollow Unwrapped or Wrapped
裸または包装された中空物
メーカー特定の対象物
Big Autoclave Cycle クラス B Hollow and Porous Unwrapped or Wrapped
固形、中空、多孔性物
非包装または包装、一重・二重包装

ちょっと分かりにくい表ですね。

世界的に最も広く普及し、殆どの歯科医院で使われているオートクレーブは、クラス N で小型高圧蒸気滅菌器です。このクラスNのオートクレーブでは複雑な形態の器具や、細いチューブの内面、多孔体の紙や布などの治療器具を完全に無菌状態にするのは、実は困難なのです。

クラスSはバキューム機能を備え、蒸留水の蒸気を注入できる機種で、滅菌前に1度真空状態を作り出し中空物や包装されたものの内部まで滅菌できるクラスです。

>これに対し、クラスBのオートクレーブは、滅菌前のパルス真空(プリバキューム)を真空と蒸気の注入を交互に繰り返すことにより、チューブ状の内部や多孔体内部の残留空気を抜き、蒸気を細部の奥まで行き渡らせるようにします。これにより中空、多孔性物についても滅菌可能となります。また、使用するエアーはバクテリアフィルターを通した清浄なエアーを使用しており、あらゆる種類の被滅菌物を安全に滅菌することができる性能があります。

クラスSとクラスBの最大の違いは、クラスSが真空状態に1回だけするのに対して、クラスBは真空と蒸気の注入を交互に複数回繰り返すことで、残留空気を抜き、蒸気を細部まで行き渡らせ確実な滅菌が行えることです。

そのために、ヨーロッパの歯科およびに口腔外科向けに実施された感染予防ガイドライン(2006年7月)では、歯科及び口腔外科において使用される医療器具の滅菌には、クラスB のオートクレーブの使用のみを推奨しています。

滅菌対策当院では、このヨーロッパ基準クラスBのイタリアW&Hステリライゼーション社製 Lisa(リサ)を使用して感染予防に努めています。

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